回復術師のソロプレイ・職業コンビニ店員ときおり妖怪討伐者-第4話【オリジナルライトノベル】

異世界(黄泉世界)は第4話から、戦闘シーンは第7話からの予定です。

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4 討伐者と同時進行世界

「おぬしは現世の人生をやり直したいのか?」

 そうだった!何のためにここに連れられた来たのかたけるは思い出した。

 異世界転生のような気分で、つい浮かれてしまっていた自分を恥た。

(そうだ、俺はやり直したいんだ――)

 数々の後悔を、選択の間違いを正し、今社会の底辺にいる自分を変えたい。

 少なくとも神城かみしろに告白できるような、デートに誘えるような自分になりたい。

 それが望みだったはずだ。

「はい、やり直したいです!」

「で、あるか」

「はい!できたら小学生、いえ、中学生いえ、それが難しいなら高一の春でもいいです!」

「時を戻すことなどできぬ。」

(うわー!いきなり否定かー!なんだよそれー何のためにここに来たんだよ、ほんとに神様かよ)

「神である」

(やば!心の声が聞こえるのか――)

「具体的におまえの望みを言ってみるがよい」

(おお!願いは叶えてくれるのか!よくある三つのお願いを聞いてくれるとか?いやあれは、魔法のランブの話だったっけ?)

「それは童話である」

(――やばっ、聞こえてんだやっぱり……)

「えっとその、大学に行くための資金が欲しいです。できれば、大検の試験のための費用も」

「であるか」

(えっ、くれる?神様がお金くれるってありなの?)

「金があれば、汝は学力を上げ、望みの大学に行けるのか」

 たけるは「はい」と答えようとしてやめた。

 今だって時間はある、時間はあるが、勉強が続かない。

 何故だ?金がないからか?いや違う、底辺から脱したい、大学に行きたい。

 だから勉強しようと決意する……だがその意思が続かない。

 英単語集も古語単語集も、語彙集も、最初の五ページぐらいの間を行ったり来たりしてだけだ。

 金があったら、費用の心配をしないで済む……だがそれで勉強に身が入るかどうかは別の問題のような気がする。

(そうだ、ちがう、金じゃない。ダメなのは俺の意思の弱さなんだ……)

「いえ、違います。お金ではありません。それも必要ですが、俺に足りないものは意思の強さでした。根性ともいうべきでしょうか……集中力?持続力?そうだ、きっと、怠慢、弱い心に問題があるのだと思います」

「であるか」

「すみません。金がないのはただのいいわけでした」

「我は汝に手段を授けることはできるのである」

「えっ――手段を下さる?」

「汝がここで現世に害を及ぼす魑魅魍魎を討伐することは、神や人へ尽くすことである。その行いは汝に足りないもの授けるであろう」

「俺の心というか、性質というか、欠点というかそういう足りないものを得られっていうことでしょうか?」

「否、足りないもの全てである。」

「えっ――全てってことは……」

「奉仕に対する報酬は、現世と同じく全てである。肉体を保つためには衣食住が必要である。現世と違うのは、消費する時間である。現世で十年かかることが、この世界では短時間で得られる可能性がある。もちろん汝の努力次第である。よって汝がやり直したいという願いは、叶えられる」

(じゃあお金も短時間で手に入るととうことか!)

「生活費というか、学費も手に入るってことですか……」

「働けば報酬があるのは、現世と同じことよ。ただし勘違いしてはならぬ。対価は公平である。討伐者は常に生を失う危機をともなう。この世界で生を失うということは、現世での死を迎えることと等しい」

(つまりこの世界で現世の十分の一時間で達成できることがあるとすれば、生命リスクは現世の十倍ってことか……)

「答えよ、汝に問う。討伐者となり怨霊崇徳を倒すか?汝は何千もの魑魅魍魎、妖怪の類を滅するための生をかける覚悟を持つのか」

(これって神様に特別選ばれてひいきされるってことではないんだ。公平ってことだ。妖怪って怖そうだよなあ、斬ったり斬られたり、痛い思いするんだよなあ……グロイの苦手だし。でも、現世で頑張っても、というか頑張れる気がしない……そしてどうせ死ぬのはどちらも一緒。底辺での生活を変えたいと思うのであれば、やっぱりこれはチャンスなんじゃないだろうか……)

「すみません、今少し時間を下さい」

「よいが、あと五分じゃ」

(えっ?たったの五分……そうだ河原崎かわらざきさんも社長になったんだよな……リアルMMOのつもりでやるのなら、俺にはこっちのほうが向いているのかもしれない?……。でも死ぬ気で頑張れは現世でだってなんとかできるんんじゃないか?いや、いつになったら、大学資金ができる?学歴をつけられる?あっという間に二十歳超えて、気づいたら三十歳なって……)

 思考はぐるぐる回る。

 繰り返しどちらかが強くなり、またそれを否定する。

「あの、体験するってできないんですか?やっぱり妖怪とかと戦うってどんなことなのか、やってみないとわかりませんし……」

「であるか。黄泉の世界を見てくるがよい。四十九日、汝に猶予をあたえる。一度現世にもどり、またここに戻ってくるがよい。あとは先導者に尋ねよ。我は帰る」

「はい、ありがとうございます」

 たけるは深々と頭をさげた。

「よかったです!多神たがみ君、あなたは素晴らしい回答をしました。安易に返答していたら、神はあなたにこの世界に来る資格を与えなかったでしょう」

「えっ!そうなんですか?」

「ええ、神はお見通しですからね」

(そうかよかったんだ。体験しないと分からないとか、逆にまずいこと言ったかなとも思ったんだけど)

「今の会話は、神から討伐者としての資格をもらったということです。もちろんこの世界を体感後、やめることもできます。ただし、辞退したら二度とこれませんけれどね」

「ふーっ、そうなんですね。ほんとよかった。」

 たけるは深くため息をついた。

「あの、質問してもいいですか?」

「もちろん、いくらでも。但し、私もすべてを理解しているわけではありません。私をここに導いてくれた人から聞いたことと、私が体験したことの範囲でしか分かりません。また私の推測も含まれますので、間違っていることもあるかもしれません。予めそれを理解しておいてください」

「分かりました。では、一番気になること。この世界にいる間、現世はどうなているんですか、つまり戻ったらどうなっているのかと……」

「今、コンビニの中を想像してみてください」

 たけるがコンビニの中を想像すると、不思議なことに自分がそこにいた。

 ちょうどお客さんがやってきて、自分が対応しているところだ。

「あたためますか?」とお弁当のあたためを聞いている。

(あれ、なに、夢見てただけ、コンビニに戻ってる?イヤ違う……)

 同時に、和室にいる自分も自覚できる。

(俺、頭があたまがおかしくなったのか、もしかして精神分裂!)

 ちょっしパニックになりそうだったのを見て、パンパンと河原崎かわらざきたけるの肩を叩いた。

「大丈夫ですか?最初は驚きますよね。自分が同時に二カ所に存在しているのって」

「えっ、どういうことですか……ちょっと混乱してます」

「表の世界では、そのまま肉体がそこにあって、同時に生活しています。そちらに意識を持っていけば、そちらの認識が強くなります。ただし、それはこの高天原たかまがはらでだけです。ここは現世と黄泉の間にある空間なので、この建物の中でだけその認識ができます。ここから外に出たら、霊体から現世の自分を認識できません。逆にここに戻ったら、現世の自分の行動の記憶が全て入ってきます。それはまるで、黄泉の世界にいた間の現世での自分を生きているのと同じように感じられます。過去のことのはずなんですが、現在のように生きるのです。まあこれは体験しないと理解できないと思います」

 初めての感覚に凄く戸惑った。

 だが何故か同時に両方の自分が自分である。

 自分が二人いるように感じられるが、それは誰かが変わってやっているのではなく、両方とも自分が行動していることのようだ。

「凄い、なんかマルチタスクな脳になったみたいですね」

「そうですね、CPUのマルチタスクって、多分こういうことなんですかね。同時に脳が処理しているようなもんですよね。」

「なるほど、なんとなくは理解できてきました。ほんとこれは実体験しないと分からない事ですね」

「あと一つ重要なことがあります。この世界では霊体なので生命エネルギーをかなり消費します。だいたい30日ぐらいが限界です。限界を超えると、もう肉体に戻れなくなるので注意して下さい。だから皆余裕をもって、一週間ぐらいで現世に戻るのが普通です。この部屋に戻ってきて『一時帰還します』と唱えれば現在肉体がいる場所に戻ります」

「なんか幽体離脱している状態みたいですね」

「ええ、私もそんなイメージを持っています」

「……もしその時家にいたら、家に戻るんですか?」

「そうです。出たときは、自分がいる場所です。入り口は他にもあるようですが、私が知っているのはここのコンビニのトレイだけです」

「なるほど……。ここで死んだら、肉体にもどれないって聞きましたが、その先はどうなるのですか?あっ、あとこっちで怪我したときとかは……」

「死んだ場所によって妖気の濃さが違い、それによってそれぞれの層の妖怪と変化します。この世界では傷や損傷を受けてもそれは霊体が受けているので、現世の肉体に傷や損傷は残りません。私は、この世界で右腕失ったことがありますが、現世に戻ったらちゃんとついていました」

 ほらねっという感じで、河原崎かわらざきは右腕の袖をまくって、左手で握って見せた。

「注意点として、黄泉世界のものはほとんどは現世にないものです。見た目は同じように見えていても、物質的に違う物でできていますので、持ち出すことができません。剣とか防具とかも見た目は変わらないですが、それは思念でそう見えているだけです」

「じゃあ、この世界で金銭的な報酬とかもらっても、いえ、そもそもそういうものがあるのか分からないですけど、持って帰ったりできないってことですか?」

 河原崎かわらざきは懐から多角形の青白いクリスタルのようなものを出した。

「妖怪を滅すると、この浄化結晶が後に残ります。妖怪から魂が解放されて浄化された生命エネルギーで、生気の塊です。この浄化結晶はこのままだと妖気をまだ含んでいますので、精製して浄化するのですが、この世界の武器防具、術を使うための触媒などのあらゆる材料となります。妖怪に対して効果を発揮できるのはこの生気の塊である浄化結晶から作られているからです。浄化結晶は黄泉世界の商店で金貨に変えられます。そしてこの金だけは表世界とおなじ物質なので持ち出せます。これを売れば現金にできます。ああ、それと未成年は換金できないでしょうから、私の会社に持ってきてもらえれば引き受けますよ」

「よかった、ありがとうございます!」

(そうか、これで大学費用もそうだが、予備校にも行けるんじゃないか?死んで妖怪になるのごめんだけれど、俺の人生を逆転できるかもしれないぞ!)

「分かりました。では体験させてください。この黄泉の世界を」

「分かりました。行きましょう!」

 河原崎かわらざきが襖に手をかけて勢いよく開けた。

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